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細雪 [その他読書]

細雪

細雪


京都の名所を訪ね歩いているうちに、京都に因んだ小説を読んでみようと思った。谷崎潤一郎の「細雪」には、京都の平安神宮神苑の紅枝垂桜が何度か登場する。
主人公の三姉妹は、毎年春京都に桜を見に行くのを恒例としており、分けても平安神宮神苑の紅枝垂れを格別に思っている。


平安神宮神苑の紅枝垂れ

「細雪」は谷崎潤一郎の代表作であるが、残念ながら、この歳まで読んだことがなかった。「細雪」は、本来、上・中・下3巻から成るが、中公文庫の「細雪」は、3巻を1冊にしており、全部で900頁を超える大作である。読んでいるうちに、徐々に引き込まれて行く作品である。

主人公が美人三姉妹とあって、男性としては、自分の好みの女性をイメージしながら、読み進める。時代背景は、昭和の初め、日本が第二次世界大戦に向かって、突き進んでいる頃である。舞台は芦屋の高級住宅地である。三姉妹は、今で言うセレブである。今の時代なら当たり前の生活であるが、旅行に行ったり、高級レストランで食事したりすることは、当時としては上流社会の人しか出来なかったことだったろう。そういう当時の人々が憧れるセレブの生活を各所に散りばめながら、三姉妹が織り成す人間模様を展開していく。

ここで登場する三姉妹は、四人姉妹の次女、三女、四女である。長女は、別格の存在である。三女の雪子と四女の妙子は、長女のいる本家(大阪)に居つかず、次女の嫁ぎ先(芦屋)で居候をしている。

三女の雪子は、30歳過ぎの独身で、20代前半で結婚することの多かった当時としては、いわゆる行き遅れで、周囲の人の紹介で、様々な人とお見合いをする。これが物語の中心をなしている。戦前の日本では、女性も30歳を過ぎると、見合いの相手も再婚の男性が多くなる。いろいろ見合いをするが、なかなか纏まらない。昔の日本(今もそうかもしれないが)は、個人の好みより、家柄を重視する。いろいろな障害があって、見合いが壊れるのだが、当時の結婚に対する考え方が認識できて、新鮮で面白い。三女の雪子は、内気な女性で、電話が苦手で、自分の意思表示をしない女性であるが、実は、芯は強く、好き嫌いがはっきりしている。

対照的なのが、四女の妙子だが、自由奔放な性格で、以前男と駆落ちをして新聞沙汰になった経歴を持つ。この妙子を巡る物語が、また面白い。水害の時に溺れ死にしそうになったところを男に助けられ、その男と結婚しようとするが、その男は医療過誤で死んでしまう。今度は駆落ちした男(船場の宝石屋のぼんぼん)とよりを戻すかと思いきや、身分違いのバーテンダーの男の子供を身ごもる。世間体を気にして、有馬温泉の旅館に潜伏、神戸の病院で密かに出産しようとするが、子供が逆子で、分娩の時に医師のミスにより、死産となる。波乱万丈の人生である。

この物語は、一応はハッピーエンドで終わる。雪子は子爵の庶子と結婚が決まり、妙子もバーテンダーの男と結ばれることになる。何か波乱の予感を残した幕引きである。

谷崎潤一郎の作品をこうして最後まで読んだのは初めてであるが、新鮮で、十分楽しむことが出来た。まだの方には、一読を薦めたい。

(参考)


谷崎 潤一郎(たにざきじゅんいちろう、1886年7月24日 - 1965年7月30日)
明治末期から第2次世界大戦後にかけて活動した小説家。耽美主義とされる作風で、『痴人の愛』『細雪』など多くの秀作を残し、文豪と称された。代表作は以下の通り。

陰翳礼讃

陰翳礼讃

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1995/09
  • メディア: 文庫


痴人の愛

痴人の愛

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1947/11
  • メディア: 文庫


文章読本

文章読本

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1996/02
  • メディア: 文庫


刺青・秘密

刺青・秘密

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1969/08
  • メディア: 文庫


春琴抄

春琴抄

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1951/01
  • メディア: 文庫


卍

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1951/12
  • メディア: 文庫


少将滋幹の母

少将滋幹の母

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1953/10
  • メディア: 文庫


蓼喰う虫

蓼喰う虫

  • 作者: 谷崎 潤一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1951/10
  • メディア: 文庫

なお、「細雪」は、3人目の松子夫人とその妹たちとの生活を題材にしたもので、1942年ごろより、「中央公論」に掲載されたが、1943年奢侈な場面が多いとして、軍部による発行差し止めに遭い、2回で掲載禁止となった。しかし、その後も執筆を続け、戦後1948年その全編を発表する(毎日出版文化賞、朝日文化賞)。これによって谷崎の名声は確立する。内容そのものは芦屋の上流家庭の日常を淡々と描いた長編小説にすぎないが、その風俗性の豊かさと源氏物語のつよい影響を受けたモダニズム小説的な手法はきわめて高い評価を得ている。


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コメント 14

HANA

過日はnice!ありがとうございあすm(__)m
最近、小説読んでいない気がします。。。
お写真、素敵ですね♪
by HANA (2007-06-06 22:34) 

はまひるがお

私も若いころ、谷崎潤一郎の本はかなり読んだつもりです。「春琴抄」とか「芦刈」などは繰り返し読みましたが、なぜか「細雪」だけは読んでいません。そのころ、読書は、ほとんど通勤電車内でしたので、分厚い本は敬遠したのですかな?
貴解説を読ましていただいて、読んでみたくなりました。
それから、桜はやはりベニシダレですね。
by はまひるがお (2007-06-07 02:09) 

夕月琥珀

「細雪」は私も読んでません
分厚い本が嫌いではないのですが……
by 夕月琥珀 (2007-06-07 04:45) 

マイケル

HANAさん
昭和の初期の小説を読んで、非常に新鮮でした。
昭和も遠くなったような気がします。
by マイケル (2007-06-07 07:06) 

マイケル

はまひるがおさん
沢山読まれているんですね。
by マイケル (2007-06-07 07:07) 

マイケル

夕月琥珀 さん
私も初めて読みましたから。
by マイケル (2007-06-07 07:07) 

mimimomo

おはようございます^^
谷崎潤一郎の作品は『痴人の愛』を途中まで読んでやめました。それっきり読む気がしません。
『痴人の愛』がどうにも不愉快だったからです。わたくしに決して向かない作家だという気持ちが今でもぬぐえません。
by mimimomo (2007-06-07 08:43) 

うー読んでない。
by (2007-06-07 12:40) 

ミモザ

動機が素晴らしい!私は大昔に読みましたが、
殆ど覚えていません。こんな事でいいのかな(^_^.)
by ミモザ (2007-06-07 19:06) 

マイケル

mimimomoさん
「細雪」は、少し違うと思います。
by マイケル (2007-06-07 20:05) 

マイケル

tanaka-ma3さん
私も、○十○才になって、初めて読んだのですから。
by マイケル (2007-06-07 20:06) 

マイケル

なっちのママさん
大した動機ではないと思います。
by マイケル (2007-06-07 20:07) 

春分

得意ではない分野ながら、この記事を読むと、読んでみようかと思いますね。
by 春分 (2007-06-09 10:18) 

レイン

受験勉強で谷崎の代表作として暗記しました。
題名だけ知っていて実は読んでいないこういう本がいかに多いことか。
by レイン (2007-06-10 09:43) 

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